経営系大学教員の授業の小ネタ

とある大学で経営学を教えている大学教員が授業で話せそうな小ネタを集めておくブログ

AIDMAモデルの説明でつかえるル・クルーゼのマーケティング戦略

AIDMAボトルネックを突破するル・クルーゼマーケティング戦略

プレート・ロンドの価格は税別5000円。同社の主力商品であるホーロー鍋「ココット・ロンド」(2万~4万円)に比べると4分の1以下。関心はあるものの、手を出しにくいと感じている若い女性を取り込む。(『日経MJ』2017年6月26日、5ページ)

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AIDMAモデルの詳細な説明は以前の記事で述べたのでここでは省くが、人が商品・サービスを購入する際には、5つの段階を踏むと言われている。まずは、ある商品に対して注意を払った人たちがいて、その中から関心を持ってくれる人たちが現れる。その関心を持ってくれた人たちの中から、「欲しい!」という欲望を持ってくれる人たちが現れて、その気持ちを記憶し続けて、購入するという行為を取ってくれる、というものである。

managementclass-topping.hatenablog.com

このAIDMAのどの段階で消費者が止まっているかによって取るべきマーケティング施策が異なる。

例えば、ターゲットセグメントの多くがすでに「欲しい!」と思っていて、しかもその気持ちを抱き続けてくれているのに「買わない」という状況は、「そもそも売っている場所が分からないため買えない」という状況があったり、「予算の都合上今は買えない」という理由があるためであろう。その場合は、今さらCMをたくさんうって、商品の良さをアピールをしても効果は薄い。より重要なのは、生産体制を整えて店頭に商品が並ぶようにしたり、小売店との連携を深めてより目立つような場所で販売をしてもらうといったことであり、また値下げをして買いやすくするといったことである。

この「値下げを買いやすくする」というのを新商品の販売によって実現しているのが上記のル・クルーゼが9月に発売予定のプレート・ロンドである。

ル・クルーゼの4P's

ちなみに、プレート・ロンドの4P'sについてもしっかりと触れられているので、そこもまとめておこう。

Productは、記事によれば「一人分の量を作りやすいサイズ」で「出来立ての料理をそのままテーブルに置けるデザイン」という物理的特性を持たせている。これは、単に一人で料理を楽しむというだけでなく、その料理の写真をインスタグラムなどで公開して「いいね!」をもらいたいという承認欲求を満たすという本質サービスを提供するためであると思われる。

Promotionについてはル・クルーゼのアカウントを利用したSNSによる広告活動を行っている。これは、ル・クルーゼのアカウントをフォローしている人たちを中心に情報を発信することになるが、すでに「ル・クルーゼの商品を欲しい」と思ってくれている人たちがターゲットであるため、積極的に情報を取りに来てくれているはずだという予測があるものと思われる。

Priceについては先述したとおり、気軽に購入しやすい5000円にしている。

販売する場所であるPlaceについての記述はなし。そこだけが残念。

ただ、講義で使わなければ、テストでこの記事を読ませてマーケティング戦略を分析させるというのもできる良い記事。