経営系大学教員の授業の小ネタ

とある大学で経営学を教えている大学教員が授業で話せそうな小ネタを集めておくブログ

富士そば(2017年5月22日『日経MJ』3ページ)

富士そばのSTPとProduct、Place

富士そばターゲットセグメントが多忙なサラリーマンで、Productの性質が最寄品に近いものであり、Placeもそれに合わせていることが分かる。

ー創業以来から出店条件は変化していますか

「変わりません。黒色の人通り、すなわちサラリーマンが多い場所。赤い色(女性が好む明るい服の色)のお姉さんよりいいんだわ。道は広すぎてもダメで幅は6メートルくらい。そして、駅のそばで角地で間口が広いところ。食べたいという衝動が変わらないうちに入れるようにと考えています。」(2017年5月22日『日経MJ』3ページより引用)

ターゲットセグメントとProductとのフィットの重要性

また、同インタビューではターゲットセグメントからぶれたProductを出すと売れないということも分かる。

「そば屋には野菜がないでしょ。何とか野菜を売りたくて100円のゆで野菜のセットを売るよう言いました。ふたを開けてみると売れる店と売れない店に分かれて、今はほとんどない。理由を聞いたら、『会長、全然売れないんですわ』と言われて(笑)やはり健康より味なんだね。』(2017年5月22日『日経MJ』3ページより引用)

この部分からは富士そばのメインターゲットとなっているサラリーマンにとって「安くて早くてそこそこうまい」というサービスが重要なのであって、「ヘルシー」というサービスの提供を求めておらず、それによって失敗してしまったことが分かる。

Priceと富士そばの競合について

Priceについては500円程度であることやライバル店として想定している企業も次の記事内容から分かる。おそらくコスト意識の高いサラリーマンに合わせた金額であろう。

ーファーストフードは行きますか。

「500円払ってうちの商品とどれぐらいの差があるかを見るために食べます。吉野家リンガーハットケンタッキーフライドチキンなど行きますよ。最近ではケンタッキーが一番いいかな」(2017年5月22日『日経MJ』3ページより引用)

Promotionに関する記述がなかったため、富士そばの会長である丹氏はPromotionについては重視していないのかもしれない。富士そばのProductが最寄品だと仮定すれば、食べたいと思った時にすぐそばにあることが重要であるため、普段から認知度を高めるなどする必要はないということかもしれない。